(結構)一般的なRodrigues(ロドリゲス/ロドリグ)公式について
こんにちは、理学敗北者です。
色々なタスクに押しつぶされているので、現実逃避でむかーしに勉強したRodriguesの公式をメモしました。
形さえ決めてしまえば(割と自然に)Jacobi、Laguerre、Hermite多項式が導ける議論が好きです。
あと漸化式を使わずに飛び道具的に微分方程式を得ることができるので、量子力学のめんどくさい議論を省略できて速習に向いているのではないでしょうか?(もうやっている教科書はあるかも。)
以下が資料です。
参考文献は以下の通りです。
・犬井鉄郎: 特殊関数 (岩波全書)
勉強している方の助けになれば幸いです。
D次元ラプラシアンのGreen関数について
こんにちは、理学敗北者です。
用事があって$D$次元のラプラシアンのGreen関数を考えていたのですが、一般次元のことを考えた際にあまりにも$D=2$の性質がよくないことについて、少し考えてみました。
二次元のGreen関数の求め方は、(細かい差分含めて)合計で5つ紹介しています。 特に次元正則化みたいな操作をする方法は簡単には見つからなかったので、面白いかなと思っています。
参考文献は、資料内に明記させていただいております。
勉強している方の助けになれば幸いです。
*追記231220: ガウスの発散定理を用いた議論で、説明文を変更しました。
X(旧Twitter)にてご指摘下さったPS2 様、ありがとうございました。
ラプラス近似と鞍点法をできる限りそれっぽく証明してみる
参考文献: Wikipedia: Laplace's method
英語版のwikiには結構書いてあるのに、日本語の文献が見つからなかったのでバーっとメモしました。 色々と雑な箇所があるかもしれませんが、ご了承ください。
方針としては、鞍点法の前に実関数版であるラプラス近似を議論するという流れです。
ラプラス近似
という積分で表される関数が、$ T \gg 1 $でどのような漸近形を持つのかを議論したい。ここで漸近形$ A(T) $とは
が成り立つ$T$の関数である。簡単にわかるように、その候補には
のように大きな$T$で消える寄与の不定性があることには注意。このような$A(T)$を見つける実積分の議論をラプラス近似と呼ぶ。以下で証明するように、最終的には以下の式が成り立つ。
ここで$ x_0 $とは$D$の内部にある極大値かつ最大値である点である。以下ではまず$w(x)=1$の場合を示す。
証明
以下ではある$x_0$から距離$\delta$の領域を$ D_\delta(x_0) := ( x_0 - \delta , x_0 + \delta ) , \delta > 0 $と表す。より数式的には
と書く。またこの領域での2次のテイラーの定理は
という主張である。特に$ f''(x) $の連続性を考えれば以下の主張も成り立つ。
つまり$ c \in D_{\delta(\epsilon)}(x_0) $では$ f(x_0) - \epsilon < f(c) < f(x_0) + \epsilon $がなりたつ。そのために
が成り立つ。以下では$ \delta(\epsilon) \to \delta $と略記する。これを用いてラプラス近似を証明する。
まず目的の積分の下限を考える。領域$D$に含まれる極大点
について、以下の不等式評価が成立する。
この両辺を$ e^{Tf(x_0)} \sqrt{ \frac{ 2 \pi }{ T \abs{f''(x_0)} } } $で割ることによって以下の式を得る。
同様の記号を用いて上限を証明する。以下では
とする。
ただしここで実数の連続性から$ f''(x_0) < 0 $について(任意だった)$ \epsilon $を$ f''(x_0) + \epsilon < 0 $が成り立つように選んだ。先ほどと同様に両辺を$ e^{Tf(x_0)} \sqrt{ \frac{ 2 \pi }{ T \abs{f''(x_0)} } } $で割ることによって以下の式を得る。
ここで$ T $が大きい時に$ R(T) $が$0$に収束する条件を調べる。ここで$ x_0 $が真に最大値であることから
が存在する。その値を用いることによって上から抑えられる。
つまり$ \int_{ D } \dd x ~ e^{ f(x) } $が有限であれば$ T \to \infty $で収束する。つまり二つの不等式から
が成り立つため$ 0 < \epsilon < \abs{f''(x_0)} $の範囲で任意である$ \epsilon $を小さく選ぶことによって
が成り立つ。ただし$ x_0 $は$D$での関数$f(x)$の極大値かつ最大値を取る点である。$ {}_\Box $
さてより一般の場合
の証明を行う。以下では$ w(x) $が常に正であるとする。この場合
という一価の関数を定義できる。この場合に$W(x)$の逆関数$ x(W) $を用意できるため変数変換で
を定義できる。この量について先ほどのラプラス近似を適用する。その場合の$ F(W) $の最大値は
を満たす中で$ F(W) $が最大になるものである。これは$ x(W=0) = x_0 $であるため
が成り立つ。負の値を持つ場合には$ W(x) $が単調減少で一価な関数となり、その場合には変数変換で$-1$の符号が出る。その場合には平方根から出た$ \abs{ f(x_0) } $と符号で元の$ f(x_0) $へ戻る。また$W(x)$が多価になる場合には適切に領域を分割する。以上で一般の場合の証明も完了した。$ {}_\Box $
ここでは最大値の点のみを考えたが、同様の議論を全ての極大値$ x_i $について行い
を得ることができる。しかしこれは最大値$f(x_0)$について括り出すと
となるが、和の中は$ T \to \infty $で
となるものである。よって最大値ではない極大点は漸近形の不定性にすぎない寄与を与える。
鞍点法
以下の複素積分を考える。
ここで経路$C$は$ f'(z_0) = 0 , ~ f''(x_0) \neq 0 $となる点$ z_0 $を用いて$ \Im( f(z) ) = \Im( f(z_0) ) $となる虚部が一定の曲線、もしくはコーシーの定理によってそのような経路に変形できるものであるとする。これは
という値を持つ。これは先ほどのラプラス近似の複素数版であり、それを用いて証明することができる。
証明
まず、今考える積分で虚部が一定であることから以下の式変形が成り立つ。
この場合の$ Q(z(\lambda)) := \dv{z(\lambda)}{\lambda} w( z(\lambda) ) = A(\lambda) + i B(\lambda) $について各ラプラス近似を行えば
が成り立つ。ここで$ \Im(f(z(\lambda))) = \mathrm{const.} $であることと正則関数が微分の方向によらないことから
であり、考える点では$ \dv{ f(z) }{ z } = 0 $であることを用いた。また$\Re ( f(z(\lambda)) )$がラプラス近似を満たす関数である経路が$ C $であることと、その際に$ z_0 $を通る角度が$ \theta_{\pm} $であることを用いた。以下ではそれを証明する。
まず$ C $が関数$ \Im( f(z) ) = \Im( f(z_0) ) $を一定とする場合、その経路は$ z = z_0 $を通り$ \Re( f(z) ) $の値が最も値の変化が激しい経路であることを証明する。実部と虚部を以下のように書き直す。
この$u(\vbr), ~ v(\vbr)$についてコーシー・リーマンの関係式から
が成り立つ。ここである場の関数
について
は
における等高線について垂直な向き、つまり最も急な向きである。つまり、先ほどの関係は
の急な方向が正則関数については常に垂直であることを表している。複素平面は二次元であるため、これは
の一定の線(等高線)と
の急な方向が一致するということである。つまり今考える$ C $は
が急な曲線であることがわかった。
また$ f'(z_0) = 0 , ~ f''(z_0) \neq 0 $である点では最も急な線が2本通っていることを示す。その点の周りでは
と展開が成り立つ。ここで$ \theta $が経路が進む方向を表す。ラプラス近似を用いるためにこの経路ではこの点の経路上で$f(z)$が実数でその係数が負の実数である方向を動く。実際に偏角を調べると
という角度で通れば2次の微分が正になる点を通ることができる。特にその位相差が$ \pi $であること、そして
であることから
が右方向、
が左方向を表していることがわかる。これを用いれば
であることがわかる。これで証明が完了した。$ {}_\Box $
終わりに
一般的にはテイラー展開の2次でガウス積分して終わりって感じですが、それよりは少しスッキリする議論かなと思います。普通に書いてある英語版のwikiは宝の山です。
Band理論のイントロとワニエ関数の触り
お久しぶりです、理学敗北者です。
用事があってHubbard模型をいじっているときに、Wannier関数も触ったのでメモしたくなった次第です。
簡単なメモ(多分誤植もたくさん)ですが、共有させていただきます。
参考文献は
浅野 建一: 固体電子の量子論
倉本 義夫: 量子多体物理学 (現代物理学―基礎シリーズ)
です。とても良い本です。
離散フーリエ変換で連成振動や1D-Potts模型を解こうの巻
連成振動って普通の力学だったりデバイモデルで分散関係を求める時とかに出てきたりしますが、あの対角化って行き当たりばったりで対角化してる感がすごいですよね。それを少し一般的な目線から見ることができる離散フーリエ変換についてのメモです。連成振動だけでなく、その応用例の一つである一次元のポッツ模型についても触れてみました。
離散フーリエ変換
離散フーリエ変換は以下の様に定義することができる。
添字をベクトルの成分と思えば、これは
$$ \vb*v = \mqty[ v_0 \\ v_1 \\ \vdots \\ v_{N-1} ] $$
というベクトルから
$$ \vb*{F} [v] = \mqty[ {F_0 [v]} \\ {F_1 [v]} \\ \vdots \\ {F_{N-1} [v]} ] $$
というベクトルへの線形変換である。
この変換は$ \eta_N $の持つ次の直交性を用いることで逆変換をすることができる。
本来の$v_n$は$n=0,1,\cdots,N-1$について定義されているが、この変換による$v_n,~F_n[v]$は便宜上、次の周期性を持っていると思うことができる。これは$ \eta^{N}_N = 1 $という性質を持つためである。
成分を拡張したベクトルを用いて連続的なフーリエ変換の場合と同様に、畳み込みを以下の様に定義する。
畳み込みは通常のフーリエ変換と同様に、フーリエ変換について次の性質を満たす。
畳み込みと巡回行列
先ほど定義した畳み込みも一種の線形変換であると考えられる。
ただし先ほども注意したように$ w_{n+N} = w_n $の周期性を用いて常に$ n - n' = 0, 1, \cdots , N -1 $とすることを約束する。例えば三次元においては次の様に定義される行列である。
一般の次元については以下の様に定義される。これをベクトル
$ \vb*w $
の巡回行列と呼ぶ。
この形の行列は、物理学において重要な例がいくつか存在する。例えば連成振動は
という行列の固有問題である。このような巡回行列の固有値を求める問題を考える。
巡回行列の固有値問題
巡回行列の定義と、フーリエ変換の性質から以下が成り立つ。
この両辺に$ \eta_N^{n'k} $を作用させて$n'$の和をとることで
という関係が得られる。これは$ W $の行列の固有方程式そのものである。つまり
が巡回行列$W$の固有ベクトルであり、その固有値は$\vb*w$のフーリエ変換の$k$成分$ F_k[w] $である。
具体例
連成振動
例えば、三つの物体の連成振動の場合の巡回行列
は、一般論から
を固有値、固有ベクトルとして持っている。全く同じく$N$個の場合も計算できて
であることを証明できる。これは周期的なバネの連成振動の固有モードである。
ポッツ模型の転送行列
この様な巡回行列は統計力学にも登場する。ポッツ模型と呼ばれる系の転送行列は
で与えられる。この固有値を求めることができれば解析を進められるが、一般論から
と計算できる。最大固有値は$ e^{K} + N - 1 $である。周期境界条件の自由エネルギーは熱力学極限( $ S := \mathrm{ Number ~ of ~ sites} \to \infty$ )において
$$ f := \lim_{ S \to \infty } \frac{ - \ln Z_{ S } }{ S } = - \ln \lambda_{\mathrm{MAX}} (T) $$
なので以下の形を持つ。
ポッツ模型とは、サイトに$N$この状態があるイジング模型である。一次元のハミルトニアンは
と表される。その分配関数は以下の形であり、転送行列を用いることで簡潔に表せる。
この$T$を対角化すると、固有値によって分配関数を計算することができる。
$ \frac{\lambda_n(T)}{ \lambda_\mathrm{MAX}(T) } \leq 1 $であることから$ S \to \infty $においては次の式が成り立つ。